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映画『ルートヴィヒ』を観る。

映画『ルートヴィヒ』を観る。   2007/5/22 みなみ会館
          小川富男

 ルキノ・ヴィスコンティのドイツ三部作の最後の作品といわれている
1974年当時、この作品はパリで上映されていて、いつも長い行列がで
きていたので、この頃制作された作品と思う。
 今回公開されたノーカット版は、上映時間が4時間以上あるので老体
にはしんどい。
 映画はバイエルン王のルートヴィヒの戴冠式の準備の場面から始まる
俳優ヘルムート・バーガーはヴィスコンティ映画の常連だが、この役者
にとっての生涯一番の適役だと思う。主人公の内面世界は絢爛豪華な建
物内部の装飾とその空間の表情によって良く表現されている。
 映画の筋書きは王とソフィの婚約破棄から、ルートヴィヒは権力を放
棄し、替って権力の芸術への乱用と同性愛者として、バイエルンの王が
少しずつ精神を病んでいく姿を描きながら進む。
 芸術家は音楽家ワグナーに傾倒して庇護し楽劇の上演、バイロイド劇
場の建設、自分の城の建設のために国庫から湯水のように出費、資産を
浪費する。
 ワグナー夫妻を名優トレヴアー・ハワードとシルバーノ・マンガーノ
が演じる。
 しかしこの映画には、いつもヴィスコンティの描く、「地獄に落ちた
天使たち」やトーマスマンの「ベニスに死す」の様な強烈な印象は与え
てくれなかった。それは多彩な作中人物の繰り広げる権力闘争の筋書き
が欠如しているようにも思えた。
 映画の中盤で、王のいとこのエリザべートが登場する。ルートヴィヒ
はこの女性にひそかにあこがれているものの、結婚出来ない事を王自身
が知っている。
 このエリザーベート役をロミー・シナイダーが演じる。
王自慢の城内部の鏡の部屋を侍女を従えて歩く場面でルートヴィヒの頌
廃れて行く精神内部を見透かす様な狂言廻しの役どころと言えるだろう
 私はこの女優がこんな名優とは知らなかった。歩く姿や動作の一つ一
つに気品と風格があって、優雅さは造形的で輝いている。
 後年ハリウッドに招かれて、2,3の作品に出演して、早逝した。
 (余談であるが、長い間アラン・ドロンの婚約者と云われたが、あま
り品格のない男と一緒にならなくて良かったと思っている。)
 本筋に戻る、ルーヴィヒは次第に精神を蝕まれて、美男子のバーガー
がだんだん画面では虫歯をむき出しにして、顔を氷づけのタオルで覆っ
て、ベッドに横たわるもう一つである裏の姿が多くなる。
 この映画では民衆がほとんど登場しない。夜の森や、城の洞窟が王の
外部世界を隔絶して、孤独を表現して映画は進む。それは荒廃した美で
あるが、主人公の狂気の色合いを濃くしていくと同時に城の建設が進む
につれて、現実感覚の喪失が死への予感として描かれて行く。
 映画としては、ドラマは平凡であるが熱気と迫力を帯びてくるのは、
美青年ルートヴィヒ演じるヘルムート・バーガーが同性愛者の部下達と
山小屋での乱痴気騒ぎのパーティが重要な部分となってくる。
 後半、エリザべートがルートヴィヒを訪ねて来て、結局ルートヴィヒ
は彼女との面会を拒否するが、前に述べた、エリザベートがリンダホー
フ城の内部を巡り歩いて、ルートヴィヒのスケールの大きな趣味的装飾
を観せられて、精神の荒廃を感じる事によって、我々観客も同様の経験
をする。
 終幕に近づくにつれて、ルートヴィヒの廃位を政府が決めて、王を捕
らえてベルグ城へ幽閉する。ルートヴィヒに、民衆と軍隊に直接支持を
訴える事を進言する人もいるが、王は耳を貸すことなく、僅かに抵抗し
て捕らえられる。
 そして最後の場面には、ある雨の夜、付添いの医師とベルグ城から散
歩に出て、沼で二人は水死体で発見される。自殺とも暗殺とも謎のまま
、城という仮面を剥奪されたルートヴィヒは、その荒廃した内面を露呈
して、水の中で醜悪な姿で横たわるところで映画は完結する。
 四時間、オペラの様な一大絵巻を観たという感じである。

参考文献
ヴィスコンティ/華麗なる虚無のイマージュ
  若菜 薫著/鳥景社/2000年9月25日発行
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by kac-web | 2007-07-04 00:09 | 映画

パリジュテ−ム

映画《Paris je T’aime》を観る。 小川富男・07/5/19
 
  京都シネマは1日1回の上映で立ち席がでる始末です。
 みんなパリが好きなのです。
  30年前、私はこの街で暮らしたので懐かしさをもってフランス映画を観る。
  映画は18人の世界中がら指名された監督が各カルチェでの小さな出合いを、
1人が5分で描くという新しい試みがおしゃれでよかった。
  
  第1話『モンマルトル』から始まる、ブリュノ・ポダリテス/監督/主演(仏)
 駐車スペースを探してやっと駐車した、風采の上がらない救急救命師の免許を持った
男の車の横で黒いコートの女が、低血糖で突然倒れる。通りかかった医師と相談して後
部座席に寝かせると、女は意識を取り戻して「手が気持ち良かったわ」と云う言葉が孤
独な男の胸に突き刺さる。それだけの話しだが心地良い余韻を残して映画は次の話に移
る。

  第2話、『セーヌ河岸』グリンダ・チャーダ/ケニヤ生まれ/監督(英)
  河岸で3人の高校生が前を通る若い女性に声をかけてナンパしている、声をかけら
れてアラブ系の女学生が驚いてその前でころぶ、気のやさしい高校生の1人が助けて、
ほころびたベールを巻き直しながら「あなたはベールで何故美しい黒い髪の毛を覆うの
か」この一言にフランス社会のかかえている移民問題と人種問題が象徴されていて、新
しい出合いを暗示している。

 第3話『マレ地区』ガス・ヴァン・サント/脚本・監督(米)
  街の印刷所にイギリス人の女性客が通訳の若い男とやってくる、若い男は印刷所の
見習いの若い男と友達になる話しである。

 第4話『チュイルリー』ジョエル&イーサン・コーエン/脚本・監督(米)
  地下鉄チュイルリ−駅のホームでアメリカ人観光客が若いカップルにからまれる話し。
 第5話『16区から遠く離れて』ウオルター・サレス/脚本・監督(ブラジル)
  16区は高級住街として知られる、この街に自分の赤ん坊を託児所に託して、電車
と地下鉄を乗継いで子守りのアルバイトにくる女性の話し。

 第6話『ショワジー門』クリストファ・ドイル/脚本・監督(豪)
 ショワジー門は13区のイタリー広場の側にある。
 シャンプーのセールスマンが中国系女性の経営する美容院を訪ねる話である。

 第7話『バステイーユ』イザベル・コイシェ/脚本・監督(スペイン) 
  妻と別れようと思っていた男は、妻が白血病の末期と知って愛人と別れて最後の
日々を妻とおくる景色をみせてくれる。
 
  私は1974年1月から75年とバステイーユ広場側のマレ地区に私は住んだの
で、地下鉄1号線のこの駅をよく利用したし、サルコジ新大統領もそうであるが、就任
式にはエトワールからシャンゼリゼとアンリーサンクを通ってこの広場までパレードす
る。革命記念広場には時々夜店も出て、地下には古い牢獄も残っていて、金曜日夜には
オートバイの愛好家が自分の新しいバイクを自慢げに、それを100人程の青少年が取
り囲む風景をよく見た。なつかしい場所である。

 第8話『ヴィクトワ−ル広場』諏訪敦彦/脚本・監督(日)
  待ってました日本人監督の登場、
 カウボーイの存在を信じていた息子を亡くした母親は、ある晩息子の声を聞いて広場
に出てカウボーイに出会う。何とも唐突で私は何故か感情移入が出来ずついていけない
話である。

 第9話『エッフェル塔』シルヴァン・ジョメ/脚本・監督(仏)
  マイム・アーテイスト同志の出会いを描く
 
 第10話『モンソ−公園』アルフォンソ・キュアロン(米)
  初老の男と若い女性が待ち合わせしておちあってメトロの駅まで会話しながら歩く
姿を1カットで写す。会話中 娘が男の拙い仏語をなおしてやるところが面白い。

 第11話『デ・ザンファン・ルージュ地区』オリヴィエ・アサヤス/脚本・監督
(仏)アメリカ人女優が映画の撮影でやってきたパリでドラッグを買う話。

 第12話『お祭り広場』オリヴァー・シュミッツ/脚本/監督(南アフリカ)
  広場の中で、若い黒人の医学生ソフィが、何者かに腹を刺されて重傷を負った黒人
男性を応急処置をしている。男性はアフリカからの移民で、多くの移民がそうであるよ
うに駐車場の掃除夫をしている。薄れゆく意識の中で以前この女性をお茶に誘おうとし
たことを思い出す。
  フランスは19世紀アフリカに多くの植民地をもっていたので、そのせいか道路を
掃除しているのは黒人の多くである。この画面からもフランスの社会問題を読み取る事
ができる。
  
 第13話『ピガール』リチャード・ラグラヴェネーズ/脚本/監督(米)
 ピガールは風俗店の立ち並ぶパリ随一の歓楽街である。長年舞台で共演してきたファ
ニ−・アルダンとボブ・ホスキンスが刺激を求めてこの街にやってくる。英語と仏語の
チャンポンの会話があるが私の語学力ではニュアンスまでは解らない。

 第14話『マドレーヌ界隈』ヴァンチェンゾ・ナタリ/脚本・監督(カナダ)
  パリの暗闇はどの街角にもあって私はアトリエから夜の語学学校に行っていたので
強く印象に残っている、パリの夜は特有の暗さである、ヴァンパイアがいっぱいいるの
ではないかと思ったりする。待ってましたパリには美女のヴァンパイアがよく似合う。


 第15話『ペール・ラシューズ墓地』ヴェス・クレイヴン/脚本・監督(米)
  イギリス人カップルが有名人が眠るこの墓地を訪ねて、女性がオスカー・ワイルド
の墓にキスするのをカタブツ男は「不潔」だと言って大ケンカが始まる。その前にたば
こを燻らせたオスカー・ワイルドが現れる。

 第16話『フォブール・サン・ドニ』トム・デイクヴァ/脚本・監督(ドイツ)
 盲目の学生トマとアメリカからの演劇留学生フランシーヌの恋人たちの風景を見せて
くれる。

 第17話『カルチェラタン』フレデリック・オービュルタン/監督
  初老のアメリカ人ペンは別居中の妻ジーナと離婚するためにパリにやってきた
 ジーナなじみのレストランで久々に顔を合わせるが、苦い思いで席を立つべンにレス
トランのオーナーが声をかける。画面からはいかにも昔のフランス映画を観ているよう
におもえた。
 このレストランのオーナーをジェラ−ル・ドバルデユーが渋く演じている。(共同監
督)今日フランスを代表する俳優であるが、私は1974年この俳優の初期の作品(バ
ルセ−ズ・他)を当時パリで観て記憶している。バイタリテイ溢れる若者を演じていた
が、だんだんジャガイモのような顏の大男になって腹が出てきた、往年のジャン・ギャ
バンの風格があってなつかしかった

 第18話『14区』アレクサンダー・ペイン/脚本・監督(米)
 カナダで郵便配達をしている中年女性が憧れのパリ観光にやってくる微笑ましい話

  映画は18話までである、パリ体験はいつの時代も各々それぞれである。
 パリを久しぶりに気持ちよく散歩した気分である。


  我国では、戦後生まれの総理が颯爽と登場して、私の
 本業テキスタイルの仕事も風前の灯である。
  最近フランスではサルコジ大統領が誕生して、EUにも
 ヨーロッパはなくなったと言った我国の評論家がいた。
  パリには人間と街の風景があると思っているのは、私の
 一つ憶えの憧憬だと笑われる。
 しかし 次にパリに行く時は、思いっきりうまいものを
 食って、うまい酒を呑んでくだを巻いてスケッチしたい
 
 それにしても少ない右上の奥歯が痛むのは何なのだ。
 チクショウ・・・・・
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by kac-web | 2007-05-18 23:38 | 映画

映画「蟲師」を観る。

小川富男Wrote

映画「蟲師」では百年前の日本の山川草木の景色と日本人の風景を見せてもらった。
大友克洋(名前1字間違っているかも)の前回の劇画映画「スチームボーイ」も面白
かったが、今回は別の原作者を得て、画面は異次元となった。
 山々山、行けども行けども森もリ、野、野、野の中を歩いて虫に取り憑かれた病気
の人々や、虫で目や耳の聞こえない人をたずねて薬で治療する人の運命的な生い立ち
と姿を描いている。
 原作は劇画であるが、今の我が国にこんな映画を創る人がいて、あざやかな意志を
持った人がいるのだと驚愕しているのである。(私は感動しやすい・・・・)
 CDは虫が発生する時に謙虚に使用されていているが不自然な感じはしない。

 MOVIX京都の比較的大きな箱で観たのですが、封切りから4週間も上映してい
るのに、まだ満員の老若男女で人気があるのか良いものは皆よくしっているのだ。
 現在私たちは巨大なシャボン玉の中にいるように思えてならないのだが、若い世代
にこんな映画作家がいて、こんなにすばらしい俳優オダギリジョウ(ゲゲゲのキタロー
みたいと言った友人もいた)江角マキコがいるのである。
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by kac-web | 2007-04-10 09:56 | 映画