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彫刻家が見たリニューアル京都市美術館

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貴志カスケ(京都アートカウンシル代表)

 11月に京都市美術館のリニューアルにの視察会に参加し内部を見てきました。気になるのは今まであった大陳列室がなくなって、そこは多目的な広場となって大規模な講演などができる場となっています。彫刻の展示場としては最適だった大陳列室がなくなってしまった事は少し心が残ります。別に今まで中庭であったところが往来のできる広場となっているのでそこに展示できるかなとも考えられます。日本では彫刻の設置において、どうしても壁際に置いて正面から見てしまう展示方法が主流です。設置スペースが十分でない故そのような展示がなされているのですが、彫刻家や作家にとっては作品は中央に置いて周りから見てもらいたいと思っている人も多々いると思います。それ故大陳列室がなくなったと言う事は残念です。まだ、美術品は展示されていませんが彫刻が設置されて、富樫実氏の作品は短くなりながらも背伸びをしながら立っていました。また、清水九兵衛氏の作品も中庭に閉じ込められた感じでした。 
 よくよく考えてみるともし富樫実氏の作品が建築家の設計の通りなくなっていたら、美術館の屋外の周囲にはひとつの彫刻も存在しないと言う事です。ここに日本の建築家と彫刻家との由々しき問題が現れているのではないでしょうか。
 日本における建築界は明治の初めは西洋の建築の流れが入ってくる中で彫刻は建築とともに少しは存在していました。昔、前川国男が設計した京都会館の建物にも彫刻が置かれ、ガラス越しに見える壁に巨大な極彩色のレリーフがありました。しかし、リニューアルされた今はその彫刻は隅に寄せられてしまい邪魔者扱いのような形になっています。日本の建築家は彫刻家や美術家等と一緒になって建物を構築していくことがどうも苦手なような感じがします。
 今回のリニューアル京都市美術館を設計した方が美術館長になりました。美術にもある程度造詣が深い方だと思いますが、そうであるならば、それまで美術館の庭にあった彫刻をきちんと建築に同化させた設計ができなかったのでしょうか。東京の西洋美術館には表にはロダンの彫刻があり、東京都美術館には堀内正和などの彫刻が展示されている。残念ながら六本木の国立美術館は屋外に美術品はおかれず、建築そのものが美術品だというがごとく曲線を織り込んだ建物となっている。僕はこれは建築家のおごりじゃないかと思っています。今回の京都市美術館のリニューアルも美術館の博物館的要素をわすれ、結果、建築家にとって自分が設計した地下への導入部分が目立つ建築となってしまいました。彼らにとって簡単には動かせない彫刻等は屋外でイベントするのに目障りなのでしょう。そして、イベント中心一過性のイベント展覧会に重きを置いた美術館になっています。
 僕はいつも言っていますが彫刻は美術の先兵隊であります。屋外に置いて美術をアピールできるからです。屋外に彫刻があれば美術に関心あるやなしやにかかわらず彫刻が目に飛び込んできます。その事によって美術の関心があまりなかった人でも関心を持つようになるかもわからないからです。ドアを開けて美術品を見に行くと言う人はすでに美術に関心のある人ですが、屋外に設置された彫刻は万人に美術をアピールすることができるのです。美術館はそれこそ歴代の彫刻を屋外にアレンジし美術館の周囲を歩く人たちに美術をアピールする必要があると思うのです。また美術の鑑賞の方法ですが、一度だけ作品を見たからといってその美術が理解できるわけではありません。そういう意味でいつでも見られる作品が見る時々によって感じ方が変化している自分を発見することも美術の鑑賞の一つです。あるときは重苦しく、ある時は跳ね上がるようにその時々の鑑賞者の心の機微にふれながら美術作品が対峙している環境も必要じゃないでしょうか。その意味でも美術館の周囲の屋外の庭に彫刻が展示されても良いと思います。残念ながら京都市美術館をリニューアルの設計をした建築家にはその感覚がなかったことが残念です。
 これからの時代は建築家も美術家もこれからは建築単独あるいは美術単独で物事が存在しているわけではなくあらゆるものが関係し融和して存在するものであると言う事の認識を深める必要があると思います。日本には韓国のように建築がなされたときに建築費の1%を美術品の予算にあてなければならないと言う法律もなく建築と美術がそれぞれ単独に発展してきたと思われます。と言うより日本の総合大学に芸術学部がないように日本では芸術は森羅万象の生活設計のいち部と捉えられず、道楽者の所作であると考えられています。それ故建築家に芸術を自分の作品に組み入れることをいってもなかなか難しいことなのかもしれません。ただ美術館においては建築と芸術を両立させる発想が必要だったと思います。設計士が館長になるのであればなおさらです。
 美術館はどのようであれ、私たちアーティストにとっては重要な存在です。そういう意味では京都市美術館も良き美術館となることように提言もしながら末永く付き合っていきたいと思います。

京都アートカウンシル2019.12号挨拶より


by kac-web | 2019-12-16 16:16 | 京都市美術館

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