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わたしの粋場

粋場とは京言葉の一つでわたしのお気に入りの場所という意味であり、スイとかイキな場所という語感がある。たとえばセンスの良い飲み屋、有名人が来る「知る人ぞ知る店」、あるいはかなり価値ありの文化財がある隠れ寺などがふさわしい。残念ながらわたしはお酒を飲まないのでそういう場所には縁がない。また歴史的素養もないのでその辺りは詳しい方にお任せして、わたしなりの楽しみの場所を紹介しよう。
 京都市西京区・桂坂野鳥公園から裏山の唐櫃越えまでの野鳥と遊ぶ道「裏山」ゾーンである。コースは3つの道から成り、それぞれが山の背の尾根に通る唐櫃越えで結ばれている。西からリョウブ坂、ソヨゴ坂、ハイノキ坂とその道で多く繁殖する特徴的な樹木の名前がつけられている。3コースとも谷川沿いから斜面に取り付き尾根を登るのだが、それぞれ個性があるので行きと帰りによってルートを代えると良いだろう。どのコースも山への取りつきは急なのだが、峰に出てからは割と楽になる。明るい尾根筋と深い谷とが適度にあり変化に富んでいる。沢山の鳥がいて豊かな自然が残っている。サンコウチョウ、オオルリ、ホトトギスなどの夏鳥の声も聞かれる、時にはシカ、イタチ、ニホンザルなどほ哺乳類に出会うこともある。春秋の良いシーズンには家族連れや小グループとコースで出会う事もあるが、シーズンを通して殆人影を見かけない。稜線のメインとなる尾根筋は昔からある唐櫃越と呼ばれる古道になっている。唐櫃越はかつて老ノ坂と同じく京都と亀岡を結ぶ2つのルートの一つだった。公道だった老ノ坂に対して、唐櫃越は隠密や人の目を避けて通る隠れ道。明智光秀の軍勢が本能寺の変を起す際に通った道と言われている。現在は松尾から沓掛山、あるいはその先の亀岡までのハイキングコースになっているので意外にも人と出会うことがある。山中のメインストリートといえる。私は野鳥や草花が好きだったので、ここを自分のフィールドにしてからは積極的に通うようになった。自然科学的な観察にはあまり興味がないので、ノートをつけたり個体数をつけたりなどはしない。それよりもむしろ逍遥に近い、歳時記のように文芸的に眺めるほうが好きである。

 季節の変化は一週間後ではあまり変化を感じない。しかし二週間単位では違いがわかる。つまり二十四節季で自然は動いているのである。その意味では月二回で一年で二十四回歩くと一番季節の変化を感じられるだろう。夏場はあまり足が向かなくなってしまう。健康のために無理をしていっているわけでないのでシンドイ目をしてまで行きたくないのだ。雨の日もまたしかり、まあ気が向くときにいけばいい。浮世のたわごとや頭に浮かぶ瞑想をあれこれ思い浮かべて遊んいるうちに、いつしかコースも終点につく。粋場とはそういう場所のことをいうのだろう。

西山遊野
by kac-web | 2005-12-04 09:54